猛烈サラリーマンとして「俺が会社を動かしてるんだ」とイキり倒していた私が、
深夜のオフィスで猛烈な頭痛と吐き気に襲われた前回。
翌朝、逃げるように駆け込んだ病院で、
医師から冷ややかな目で見つめられながら突きつけられた数字。
それが、「血圧230」でした。
さらに血液検査の結果、糖尿病も発症していることが発覚。
「冗談抜きで言いますね。
この数値、いつ脳の血管が切れて倒れてもおかしくないですよ
。明日死んでも文句言えないレベルです。今すぐ働き方を変えなさい」
医師の言葉が、耳の奥でゴーンと重く響きました。
全身からスーッと血の気が引いていくのが分かりました。
死の恐怖。
今まで「自分はタフだから大丈夫」と過信していたプライドが、
一瞬でガラガラと音を立てて崩れ去った瞬間でした。

私は断腸の思いで会社に退職を申し出ました。
あれほど人生のすべてを捧げ、年間休日2日で命を削るようにして守ってきた場所です。
「俺が辞めたら、開発ラインはパニックになるだろうな……」
「後任のやつら、ちゃんと引き継げるだろうか」
そんな申し訳なさと密かな誇りを胸に抱きながら、私は会社を去りました。
しかし、退職して数週間後、
元同僚に連絡をとったときに突きつけられた現実は、
私の心をさらに激しく打ちのめしました。
「うん、開発は相変わらず忙しいけど、普通にプロジェクト回ってるよ〜」……
え?私が抜けても、会社は何事もなかったかのように平然と回り続けていたのです。
「俺はいったい、誰のために、何のために命を削っていたんだろう……」
自分の存在なんて、巨大な組織の歯車のひとつに過ぎなかった。
体を壊すまで働いても、
会社は誰も褒めてなんてくれないし、守ってもくれない。
独りよがりの優越感に浸っていた自分のバカさ加減と虚しさに、
暗い部屋で一人、声を殺して猛猛猛反省しました。

再起を誓った転職先で、
さらなる「青天の霹靂」「もう体も心も削るような働き方はやめよう。
自分の体を第一にして、人間らしく生きよう」
そう固く心に誓い、リハビリを兼ねて私は7名ほどの小さな商社へ転職しました。
前職での実績を買われ、部長職として現場を仕切りながら、
ようやく心身ともに落ち着きを取り戻してきた5年目のことです。
突如、社長室に呼び出されました。
重苦しい空気の中、社長が言った一言。
「申し訳ない。これからは不動産に経営シフトするため4ヶ月後に会社を廃業する。
社員は全員解雇だ」 ……
はい?頭の中が真っ白になりました。
命の危機を乗り越えて、ようやく掴みかけた平穏な日常。
それが、ある日突然、何の前触れもなく足元から崩れ去ったのです。
一瞬、怒りと絶望で眩暈がしました。
「なんで俺の人生、こんな目ばかり遭うんだよ……」と。

その話をすると
青ざめた顔でいる6人の部下たちの姿がありました。
彼らには守るべき家族がいて、日々の暮らしがあります。
私の頭の中で、昔の恩人から教わった
「リスクを背負って部下を守る上司の器」という言葉が、激しく鳴り響きました。
「部下全員を守る」――落ち込んでいる暇はありませんでした。
私はすぐに社長のデスクへ向かい、直談判しました。
「社長、条件があります。部下6人には今日から2ヶ月間、
完全有給を与えて就職活動に専念させてあげてください。給料も満額払ってください」
「え、でも引き継ぎや取引先の整理はどうするんだ!?」
と難色を示す社長の目をまっすぐ見つめ返して、私は言いました。
「取引先への頭下げも、事業譲渡の手続きも、残務処理も全部俺1人でやり遂げます。
その代わり、部下たちの未来だけは保証してください」

そこからの4ヶ月間は、まさに地獄のような奔走でした。
昼夜を問わず取引先を回り、謝罪と事業譲渡の書類手続きをたった一人で黙々と片付けました。
部下たちが一人、また一人と「 次の就職先が決まりました!」と
嬉しそうに報告に来てくれることだけが、私の支えでした。 そして、6月末日。
約束通り、部下全員が誰一人路頭に迷うことなく次の職場へと旅立っていきました。
部下を見送り、誰もいなくなったガランとした事務所で、
私はポツンと一人取り残されました。
部下全員の未来を守り切ったという、ささやかな誇り。
そして、手元に残された「無職・仕事なし・収入なし」という、
本当のどん底の現実。
40代前半で私は一瞬にして社会の路上に放り出されてしまったのです――。
さあ、仕事も収入も失い、完全な無職となってしまった私。
この絶望的な暗闇から、いったいどうやって這い上がることになるのか……?

第3話:【運命のスカウト】製薬会社への転身と、「身体の声」との出会い
路上に放り出された無職の私に、まさかの救いの手が!?
のちの「手当て」の道へとつながる運命の出会いが待っていました……!
次回もぜひお楽しみに!
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